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今日の気になる記事
ウォール街、トランプ氏抑止
米国とイランの停戦を期待し、日米株が最高値を更新した。トランプ政権が軟化したのはホルムズ海峡封鎖が市場の混乱を通じて自身の政権基盤を揺るがすためだ。世界秩序を意に介さない政権をも市場が突き動かす。
「株価は上がっている。全て順調だ」。16日、トランプ大統領はガソリンの値上がりについて記者に問われると株価を持ち出して反論した。
米株価は17日も上昇し最高値を更新した。イラン攻撃後の底値は3月30日。トランプ氏が「2~3週間で終結」と早期幕引きの姿勢を強めてから市場は「TACO」を期待し上昇に転じてきた。
TACOはトランプ氏はいつも腰抜けの頭文字をつなげた略語だ。強硬策で市場が荒れるとトランプ氏が拳を下ろす様を表す。
国際法違反とされる電力施設の攻撃すら脅しに使うトランプ氏だが、市場には動かされやすい。株価以上に反応しやすいのが金利の上昇だ。
米中西部ミズーリ―州、カンザスシティ在住のニコール・ウイットロックさんは結婚を機に夫と家を買った。30年ローンの金利は6.8%。借り換えを探るが金利が上がり、待つしかない。
春は住宅市場に供給が増え、売買が活発化する繁忙期。そこに紛争による住宅ローン金利上昇が直撃した。南部テキサス州フォートワースの不動産仲介業、マシュー・クライさんは「熱心なトランプ支持者にも、住宅ローン金利が下がらないことに不満を感じている人は多い」と話す。
市場が政策に不安を感じると米国債が売られて利回りが上昇し、住宅ローンに波及する。高金利に悩む有権者の不満として政権に跳ね返る。
相互関税の一部停止や中国への追加関税引き下げ合意、デンマーク領ごリーンランド取得に向けた武力行使の否定といった「TACO事例」は、金利が急伸したタイミング近辺で起きている。
証券市場が政治を抑止するという考えは新しいものではない。
1980年代に「債権自警団」という言葉を生み出した米著名ストラテジストのエドワード・ヤルデニ氏は「政策当局者が規律を維持しない場合に、市場が規律付けを代行するというのが「自警団」の根幹だ」と話す。
トランプ氏の本意は「ウォール街がワシントンの政策決定に確かな影響力を持つことを示した」とヤルデニ氏はみる。
米国債需要を支えてきた国際的な資金源は変化している。
70年代の石油危機下で米国とサウジアラビアの合意により、原油取引はドル建てになった。中東産油国は米国から軍事支援を受ける代わりに、原油輸出で稼いだドルを米国債の購入に充当。米国債需給のアンカー役を担い。ペトロダラーと呼ばれた。
80年代には中東主要3か国で米国債の海外保有分の3割弱を占めた。エネルギー純輸出国に転じた米国にとって中東の重要性が薄れるとともに保有比率が低下し、第3国口座での管理分をのぞき3%程度になった。
中国など経済黒字国による米国債買いも減っている。米国債は国内外のヘッジファンドや投信運用会社など機関投資家の保有割合が高まり、価格が動きやすくなった。
米憲法で大統領3選は禁じられており、トランプ氏が有権者の審判を受けるのは11月の中間選挙が最後となる。残りの任期中の大統領権限行使を阻むものはほとんどなくなる。市場すら抑止できなくなるかもしれない。
著名投資家で世界秩序の歴史を研究するレイ・ダリオ氏は、「市場の混乱は「症状」であり、政治の機能不全こそが「病原」だ」と指摘する。
2026.04.20日本経済新聞1面
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